2009年頃には「1,000人募集しても40人しか集まらなかった」といった超売り手市場の状況もありましたが、最近は採用募集をかければ、それなりに人が集まるように労働市場の需給バランスが取れるようになってきました。しかしながら、離職者数の多さに比べ、採用時にはなかなか良い人が見つからないのが実情で、ベトナムには「人はいれど、良い人はいない」のではと頭を痛めてしまいます。

 

  • 年齢や経験を重視する落とし穴

そんな中、ともあれ亀の甲より年の功、社会経験があればきっと会社のキーマンになってくれるだろうとの期待からでしょうか。日本でいう油の乗った40代以降を採用される会社が特に立ち上げ期に見られます。

しかしながら、ともするとそうした方々はマルクス・レーニン主義が脳裏に刻み込まれ、先進国的な考え方についていけない、不正に手を染めやすい人材であるケースもまま見られます。

アメリカからの経済制裁を解除に伴い、ベトナムへ外資が参入し始めたのが1994年。45歳以降のベトナム人材の大半はベトナム国営企業等で洗礼を受けた方々となります。日本企業が本格的に進出を始めたのが2006年。社会人になってより10年程度日本企業で経験を積んだ人はまだわずかです。ベトナムの教育法がやや近代化されたのが2005年。革命思想から離れた道徳教育がされてきた人たちは、まだ18歳以下というのがベトナムの人材状況です。

 

  • 更なる若手人材に期待し、育てる環境つくりを進めましょう

各社が期待する「良い人材」とは、1.腕に覚えがあり、2.頭が冴え、3.人格者である人材かと思います。しかしながらそうした人材が市場に十分供給されるまでには、あと15年は必要そうです。全てが揃わないことを前提に、要員・採用計画を考える必要がありそうです。

 

  • 空席を埋めるための中途採用の高値掴みは避けたい

核となるポジションの人材が突然離職して、慌てて採用を迫られるケースがままあります。そんな状況下では、飾られた経歴書の候補者を高い希望給与でついつい採用してしまいがちです。しかしながら蓋を開けると、能力もさほどではなく、次なる転職に浮足立っているジョブホッパーだったりすることもよくあることです。

急な欠員が出たので仕方がない、との声も聞こえてきそうですが、案外離職予備軍は見つけられるものです。求職者の8割が求人サイトに登録するベトナムでは求職者を検索できる機能を持った求人サイトも多々あります。そんなサイトで御社名で検索をかければ離職予備軍が見当たります。また、慣れてくると、仕事の成果にムラがでる、帰省や私用による休暇が増えるなどの仕事ぶりから「あ。。この子辞めるな…」と感じ取ることもあります。

 

  • 内部昇進を優先したい

急な欠員や、急ぎ体制を整えたいとの思いからか、特に管理者を中途採用で埋めていく傾向が伺えます。求職者も一段高い職位を目指して、特に立ち上げ期にある会社を好んで応募します(立ち上げ期は購買が増えるため、諸々うまみが多いというのもありますが)。しかしながら、「良い人材」の3点を兼ね備えた人材は各社も容易に手放すはずもなく、応募者の多くはいずれかに欠点がある人材と想定しておいた方が良いでしょう。

ベトナムでは職務別の採用が一般的なことから、中途採用を中心とした方法に違和感を覚えるベトナム人材は少ないと思いますが、同時にベトナムでは一般的な「より高い職位を得るためには転職すべし」という風潮も会社に根付き、若手の昇進意欲をそいでしまうことにもなりかねません。最近は「上が詰まっていて昇進の余地がない」との声も受講生より良く耳にします。昇進候補生を育て、欠員時には内部昇進を中心に据えたいものです。

 

  • 若手を伸ばす環境つくり

2005年の教育法の改訂も大きな一歩ですが、年々人材の質が高まってきているように思えます。

視野の狭い上級管理者層の思考を変えたいと、教育のご依頼をいただくこともありますが、案外若手管理者層に成長の芽がある子が多くいたりすることもよくあることです。在籍している管理者層を前提に会社の将来図を描くと、潜在能力のある若手は去っていきます。

改善活動やQC活動などの自主活動を通じて若手人材に成長と自己PRの場を与え、実力さえあれば上も追い越せるとの指針のもと、下からの突き上げを促すような人材経営をされても良いのではと感じます。

 

弊社でも採用にはほとほと苦労をしていますが、総じて若い人の方が素直で飲み込みも早い傾向が伺えます。即戦力は喉から手が出るほど欲しいところですが若い人材を育てる環境つくりが意外に近道なのかも知れません。