• 全員「期待値を満たす」がベトナム流の評価?

ベトナム人管理者が行う人事評価について良く伺う課題は、「評価結果が上振れする」「部下の評価に無関心」「好き嫌いで部下を評価する」といった内容でしょうか。

弊社の教育講座で行うテストにては、驚くほどベトナム人材はカンニングに寛容です。始終注意をして回らないと、隙があれば、教材やノートを開いたり、他者と答えを共有します。また、大学での試験に際しても同様に、まずは監督官を監督しなければ、どの監督官も注意をしないとの話を伺いました。

長期勤続を前提とした日本においては、上司と部下との人間関係が会社を超えた師弟関係のようになりがちですが、各人の自尊心が強く職務指向のベトナムでは、仕事上の指示者と作業者という役割上の関係にとどまりがちです。従って、大学の試験官や弊社講座の受講生がカンニングを指摘しても互いのメリットにならないと考えるように、ベトナム人の上司も敢えて部下の評価を下げて機嫌を損ねるようなことはしなくなります(逆に機嫌を損ねても差し支えない部下の評価を下げる)。

日本では「褒めるも叱るも親心から」とも言いますが、他人同士の関係性が比較的薄いベトナムでは、親心を持つほど部下には入れ込まないようです。

 

  • 部下の育成は部下のため?上司のため?

親心での部下育成は部下のためを思っての指導となりますが、「育てても辞めて行く」、「素直には指導に従わない」、「キャリアの志向が異なる」など、各従業員がより個人として仕事をするベトナムの実情を鑑みると、「部下のために…」という動機づけで上司であるベトナム人管理者に部下の育成を促すのは、やや説得力に欠ける感があります。むしろ、上司であるベトナム人管理者には、自分のために部下を育成せよと説明するほうが受け入れやすいかも知れません。

自身が責任を持つ組織目標の達成・維持・向上を現場で推進するのは上司自身ではなく部下となります。また、自身の昇進に向けては後任となる部下を育成しておくことが必須となります。流動性の高い労働市場のベトナムでは、標準化・仕組み化を含めていかに効果効率的に部下を活用できるかが、高い成果を創出する管理者の必須要件であるともいえましょう。

 

  • 「良き管理者」は「良き評価者」

ベトナム人管理者の中には、「人事評価は部下の給与を決める作業であり、自分には関係ない」と考えたり、「実績・能力に関わらず、期待する給与を与えないと部下が辞めてしまう」と考える方がいます。

管理者の仕事の大半は部下への指示や育成と関係しており、上司の成果は部下の成果によって決まります。「良き管理者は良き評価者」とも言いますが、管理者として高い成果を出せる人は、部下を客観的に評価し、改善点の根本原因を掘り下げて指揮・指導できる人です。人事評価を部下の給与を決める作業と考えるのではなく、自身の成果を高めるために部下の改善点をまとめあげる機会として捉えて、管理者としての部下評価能力を鍛え上げたいものです。

人事評価の納得性は人事評価の1鉄則ですが、評価のプロセス(識別された改善点)への納得性が評価結果の納得性につながります。評価結果を議論するのではなく、成果向上に向けた改善点の議論に軸足を置き、改善点の多寡軽重から評価結果を導けるようにできれば、人事評価で頭を悩ますことも減らせるかと思います。